(この記事は2011年2月に皮縄愉虐邦サイトに掲載した中国語によるオリジナル記事を英語にし、それをさらに日本語に翻訳したものです)

2010年にイベント「冬縛」を成功させた主催者の一鬼のこさんとその一縄会のメンバーは、翌年にはその「冬縛」をインターナショナルなレベルのイベントに拡大させました。カナダ代表のCharmさん、イギリスからはEsinemさんと縄師村川さん、ドイツ出身の長田スティーブさん、アメリカからはMidoriさん、そして台湾からはこの私‥‥と6名の外国人パフォーマーに加え、日本人パフォーマーとしては一鬼のこさんをはじめ、蒼月流さん、風見蘭喜さん、奈加あきらさん、そして一縄会の皆さん(音縄さん、海月くらげさん、エロ王子さん、紫護縄びんごさん、時雨さん、獅子若さん、蓬莱かすみさん、よいさん)の総勢12名がエントリー。その他にも多数の緊縛愛好家が集い、「新春緊縛自慢大会」などでそれぞれの縛りを見せてくれました。MCはSMライターの神田つばきさんとSM女優の早乙女宏美さん。会場は渋谷にある四階建てビルのクラブアクシスで、2階、4階で二つのセッションがほぼ同時進行で行われました。3階はフードおよびドリンクコーナーと志摩紫光さんによる緊縛体験コーナーや責め絵師小妻容子さんの絵画展および作品販売がありました。緊縛写真家杉浦則夫さんの作品もいたるところに飾られていました。その他いろいろなSM関連本、縄、DVDなどが販売されていました。神田つばきさんの司会で行われた2日目の「Special Talk Show」では私もスピーカーの一人としてそれぞれの国の縛りなどについて語りました。取材陣も含めとても反応が良かったです。冬縛の参加スタッフは70名程度とのこと、これが日本最大級のイベントなのかどうかは分かりませんが、とにかくすばらしいイベントであったことは間違いなかったです。


 

このイベント中、皮縄愉虐邦が台湾でかつて開催した「夜色縄艶」を思い出しました。多くのスタッフが信念を持って自発的に参加しているという点が共通であり、カルチャーとしてのパフォーマンスや作品展示を可能にした冬縛は夜色縄艶が目指したイベントそのものでした。

イギリスから参加のEsinemさんと話す機会が多々あったのですが、今年の冬縛開催の経緯を教えてくれました。ここ10年ほどの間に欧米のSM界でも日本の緊縛への関心が高まってきているそうです。2010年に鬼のこさんをイギリスに招待した際のパフォーマンスについて「ペンが床に落ちる音さえ聞こえるほどの静寂の中、200名の観客の前で見せてくれたのは音楽なしでのパフォーマンス。圧巻でした」とのこと。「我々は写真から見よう見まねで縛りを学ぶしかなかったが、縄師から直接指導を受けられることは貴重なことだった」と語り、鬼のこさんはヨーロッパの緊縛シーンにセンセーションを巻き起こしたそうです。

それは鬼のこさんにとっても同じことで、招待を受けるだけではなく、逆に海外の優れたパフォーマーを日本に招待してみたらどうかと考えたそうです。訪れた世界各地で繰り広げられる様々な縛りに対して、鬼のこさんは良い、悪いと批評するのではなく、異なるものと認識しました。そんな多様な縛りを一同に集め、お互いの縛りを楽しむ機会を作りたいと思ったそうです。

この2日間、ヨーロッパに変化をもたらしたものと同じマジックが冬縛のパフォーマーと観客にも起きていると私は感じました。良いパフォーマンスに引きつけられた優れた観客の共鳴は、パフォーマーが必要とする新たなインスピレーションとして昇華するのです。

世界各地の秀逸なパフォーマーが現代緊縛の起源である日本に集結し、お互いの縛りを直に見て学ぶ場となった冬縛。そして日本で得たそれぞれを自分の国にて還元してゆく。ただの楽しいお祭りにとどまらず、緊縛の将来にも有益なものだったと鬼のこさんたちに感謝します。自分がその場でそれを体験できたことは光栄なことでした。

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2010年の半ばに鬼のこさんから冬縛出演のオファーをもらった時は戸惑いました。「自分がそんなイベントに出てしまってもいいのだろうか?」と何日も考えて出した結論は、この先十年も「あの時出ていれば・・・」とウジウジするよりも「自分はあの場所にいてベストを尽くした」と言える自分でありたいというものでした。

今回のモデルはAkariがいいと思いました。それはステージで気が置けない相手であるし、何より二人にとって良い思い出になると思ったからです。でも、自分をステージタイプではないと自認するAkariを説得するには時間がかかりました。ようやくオッケーを出した彼女の要求は「お姫様役じゃなきゃヤダ~!」というものでした。

今回のプランはこんな感じでした。

  1. 時間を節約するため、飾り以外の結び目などは省略(お気に入りの「蜘蛛の巣」は例外・・・)
  2. Akariはモデルが従順に座って縛られるのを待っているというシナリオが好きではないので、動きのあるストーリーにする
  3. まだ日本でもウケルであろうチャイナドレスやチャイナっぽい音楽を使って、多少チャイニーズを意識する(お姫様要素を加味して・・・)
  4. Akariが習い始めたダンスを最初と最後に使う

2.と4.の理由から、Akariの手を自由にしておくため高手小手はあえてしないことにしました。練習中、Akariに巻き付けた縄が肋骨を過度に圧迫して、Akariが息ができなくなることがありました。しかし、練習を繰り返す中、肩の方に少し重心をずらすことでラクになる方法が分かりました。

しかし、ここ二年の間に自分の本業の方が忙しくなり、また可愛い盛りだけれどわがままな2歳児の子育てに追われていました。練習は子どもが起きる前か寝てからのわずかの時間のみで、仕事や子守りでクタクタになった真夜中過ぎになることもしばしば。大体の方向性が決まりかけた頃、同じく冬縛に出演するエロ王子さんのサイトを見てびっくり。エロ王子さんが昔やったものに私たちのアイデアはそっくりだったのです。落ち込みながらも仕切り直して試行錯誤を繰り返した結果、私たちが行き着いたところは2006年にJP Pubでやった吊りに似たものでした。細かいところで多少改善させはしましたが・・・。冬縛が1月末に迫っているのに私たちの構成が決まったのは12月中旬でした。しかもAkariは年末を日本で過ごすため、私たちは別々に練習をしなくてはなりませんでした。

その後ようやく音楽に取りかかり始めました。チャイナか東洋っぽいビートをネットで探しました。また、映画「臥虎蔵龍(邦訳:グリーンデスティニー)」のオリジナルサウンドトラックに良いものがあり、特に吊りが終わった時点で使いたいと思うドラムがありました。

しかし、冬縛サイドから音楽は流しっぱなしにしてほしいと言われてしまいました。そこで私は自分の縛りをパートごとに時間を何度も計って、音楽も再構成しました。すると吊りパートが思ったよりも早くて時間が余ってしまうことがわかり、Akariとは練習したことがないパートも加えなくてはならなくなりました。

音楽の調整は出演前日までかかりました。私たちはヒマさえあればそれを聴いて、タイミングを忘れないようにしました。私たちの前の「緊縛 Fashion Show」の出演者の皆さんが楽屋で歓談するなか、私たちは楽屋の隅っこで石像のように固まっていました。緊張がバレバレだったと思います。

そうこうしているうちに私たちの出番です!

チャイナドレスは縄で引きはがす予定でしたが、引っ張ったはずみに手で縫い付けたフックが取れてしまい、手ではがすといったアクシデントはありましたが、いったんステージにあがると落ち着きました。Akariの腰、足、胸を縛った後、ブラのストラップをカットしました。ほぼ予定通りに進み、調子に乗っていたかもしれません。後で言われたのですが、ステージ脇のランプに縄をぶつけちゃっていたそうです。ハイになると所かまわず縄を投げるクセがあります・・・。


Akariを吊る時になってミスに気がつきました。Akariを一回多く回したせいか、カラビナが逆方向になっていました。吊りあげることはできましたが、後で縄をほどく時に手間取るハメになりました。

今にして思えば、Akariを逆に回して、縄をほどき、間違ったところからやり直すべきでした。でもその時はそんな時間はないと思い(実際はあったのですが)、そのまま続けてしまいました。高鳴るドラム音の終了と同時に吊りを完成させ、ちょっとした拍手も出たけれど、その後が問題でした。


きつくからまってほどけない縄にナイフを使うべきかという考えも一瞬頭をよぎりましたが、これまでの経験とカンを頼りに、なんとかAkariの位置を変えました。追い込みの一ヶ月で行った友達との練習のおかげだと思います。無事に縄はほどけましたが、縄を知っている人なら私の冷や汗は一目瞭然だったと思います。

ショーの後、Akariを抱きしめキスをしました。そして日本のみならず台湾からかけつけてくれた友人とハグしました!今回出演をやり遂げたこと、とても誇りに思います。

ステージを降りると急に空腹に襲われ、その日はほとんど何も食べていないことに気がつきました。緊張がほどけ、志摩紫光さん、杉浦則夫さん、Midoriさんといった大御所と肩を並べて同じイベントに出るなんて・・・という場違いな姿もまぁいいかと思えるようになりました。何と言ってももう済んだことですし:)

楽屋に戻ると友人に「なんか神凪さんぽかったよ~」と言われ、うれしく思いました。神凪さんは私に縄を教えてくれた最初の人です。今の自分は神凪さんなしでは考えられません。今でも神凪さんのパフォーマンスが一番だったと思いますし、神凪さんに少しでも似ていると思ってもらえるパフォーマンスができたのなら光栄でした。

しかもその神凪さんがパートナーの神楽さんと私のパファーマンスを全部見ていてくれたのです!階上で神凪さんに再会したのですが、「どうしてあんなことになっちゃったの?」と私のステージ上でのミスについて聞かれたので、私は状況を説明しました。神楽さんにも「縄がからまったって気がついた時どう思った?」と聞かれ、「起こっちゃった以上落ち着いてやるしかない‥‥でした」と答えました。

その晩の鬼のこさんのショーを見て考えることがありました。

世界屈指の縄師のパフォーマンスを見ようと4階は大混雑。カメラのシャッター音は鳴り続けていました。

縄をやる人にありがちだと思うのですが、私は小難しい吊りに頼りがちです(そういう吊りはモデルに過度に耐えてもらう場合が多いです)。鬼のこさんの縄はそんな私とは対照的で、言うなればシンプルなものでした。しかしモデルとの間のエロスには緊張感がありました。緩急自在に縄を操り、雰囲気を構築していく鬼のこさんの手法に観客は見入っていました。

スピードは神凪さんが緊縛のパフォーマンスについてまず教えてくれたことでした。神凪さんのすべてを私は習得できてはいなかったせいもあるのでしょう。私は縄師の善し悪しを縄の速さや滑らかさで量るようになり、しだいに縄を速くすることばかりにこだわるようになっていきました。ビデオに写る自分の縄筋にはいつも満足できませんでした。縄の速さや大げさな動きがほめられると、その傾向に拍車がかかりました。

鬼のこさんのパフォーマンスを見て思ったことは、自分のスピードは「仮面」みたいなものじゃないか、ということです。ステージ上で感情を表せないことを隠すために得意なスピードでごまかしていたのではないのかと。ステージでの過度なエロスを表現することは自分の秘密を露呈するようなもので避けてきたのだと思います。しかし、スピードを落とす自信が自分にあるかどうかまだ分かりません。


長田スティーブさんのパフォーマンスにも同様に刺激を受けました。その名にふさわしく、4階にあふれる観客に対して見せたものは、余計なものをすべて排除したシンプルかつ高度な縄でした。私のとなりにいた二人の女性は感動のあまり涙を流していました。

翌日のトークショーでの神田つばきさんからの最後の質問である「私たちのこれから」について、私は次のように答えました。「冬縛に来る前は観客に衝撃を与えることばかり考えていました。吊りなら高度な技巧を組み込んで、何度もモデルをひっくり返そうか、など。よく縛りは心からと言われていますがそんな縛りが私の次の目標です。今まではそれが分からないままでした」

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自分の出番が終わった後はお気楽に他の人のショー三昧です。冬縛は本当にお値打ちもののイベントでした。楽屋に行ってパフォーマーにハグして、どれだけ感動したか力説したいショーがたくさんありました。イベントが2フロアで同時進行していたので、どうしても見れなかったものもあるのが残念でしたが。

イベントやワークショップをイギリスで積極的に開催しているEsinemさんを見逃したのは痛かったです。ちょっと話しただけで彼の緊縛に対する情熱が伝わってきました。「誰だってテディベアを縛れるだろうが、人を縛るのは別のことだ。体にかける縄一つ一つに意味がなくてはならない。何のエモーションも起こらない縄は無駄だ」と語るEsinemさん。彼の言葉はすべて心に留め置くべきモットーであり、彼からは学ぶべき多くのものがあるように感じました。

日本在住のカナダ人Charmさんのショーも見逃してしまいました。日本でのSM系イベントはSMバーで行われる(必然的に高額になる)ことが多いのですが、欧米ではサークル等ボランティアを基本にして行われることも普通だそうで、CharmさんはTKSocietyという欧米スタイルのSMコミュニティをやっているそうです。

音縄さんと若林美保さんともう一人の男性(お名前を失念してしまいました!)が楽屋で顔から体から白塗りしていて、どんなショーになるのか興味津々でした。ちょうど自分の出番前で緊張していたのですが、SM要素の入ったゴーストストーリーでとても面白かったです。音縄さんは楽屋でもとってもフレンドリーで楽しい人でした。

BDSMのあらゆる要素を精緻に組み込み展開していく蒼月流さんのショーには圧倒されました。また、モデルのえりかさんはホントにキレイな方でした。「SMのショーを始めて5年になるけど、私は蒼月さんの感情をステージで表現できるようにしているの」と語るえりかさんが、私たちのパフォーマンスについて「二人の間のつながりが見えて良かった」と言ってくれてうれしかったです。

縄の技術と言う点からすると、初日に一番感嘆させられたのはエロ王子さんのショーでした。エロ王子さんのブログを読んでいたし、縄が上手なのは知っていましたが、その縄や竹の操り方は予想外でびっくりしました。翌日の紫護縄びんごさんのショーも技が光ってすばらしかったです。この二人が担当した「緊縛 Fashion Show」もいい感じでした。

風見蘭喜さんは私には謎なところがありました。初めて会ったのは、夜色縄艶に出演したミラ狂美さんたちに同行してきてくれた時でした。風見さんのビデオは相当残虐なことで有名で、その頃の自分はそういうのは漠然と敬遠していました。そんな印象もあったのですが、風見さんの縄を見て偏見は吹っ飛びました。風見さんはスキルもすばらしい縄師でした。風見さんの鬼畜の側面はニッチなマーケットを狙ってのものなのかどうかは分かりませんが、SM愛好者全員が技巧的な縛りを好むわけはないですしね。友達も言っているのですが、オフステージの風見さんは「仏様のようにニコニコ」していてとてもフレンドリーです。

今夜見れるのはどちらの風見さんだろうと期待したところ、今回は私が今までに見た中で最も大きな感情が表現された感動的なショーでした。ゆっくりとしたオープニング。モデルに優しく語りかける風見さん。舞台上でむせび泣く二人は何年も会えずにいた恋人のようでした。そしてここでも風見さんの縛りのスキルを見せてもらいました。


鬼のこさんは二日目も登場です。今回はファンキーなクラブのような会場で彼の編み出した「サイバーロープ」を見せてもらいました。私はやはり初日のような伝統的なスタイルの方が好きですが、このサイバーロープは人気がますます出るだろうと思います。

Midoriさんのお名前は私がBDSMに触れるようになった頃から知っていました。直にMidoriさんのショーが見れる機会に恵まれるなんて思ってもいませんでした。トークショーで「特にルールはないの」と語っていたMidoriさん。確かにそのショーには誰もが度肝を抜かされたと思います。ステージには浴衣を着て酔っぱらった男性が二人。その上から全身黒のボディータイツに身を包んだMidoriさんが、自吊りをしながら逆さの体勢で蜘蛛のようにするすると降りてきます。男性がMidoriさんに近づくと、蜘蛛と化したMidoriさんは男性を捕まえて縛り始めます。腰紐一本で逆さ吊りのまま上下に何度も行ったり来たりしながら男性を縛るのです。強靭な肉体とその集中力には驚かされました。さらにMidoriさんの男性への触れ方がユーモアたっぷりでした。隣にいたかわいいスウェーデン人のHedwigさんが軽快に「次から次と斬新で目が離せない。次はゲイショーかなぁ!?」と言っていました。

イベント後のナイトパーティーでHegwigさんとMidoriさんと話す機会がありました。Midoriさんの二人の男性モデルは日本で調達したそうです。アメリカでも同じショーを演ったことがあるか聞いたところ、「私は同じものはやらない主義なの。アメリカでやったとしたら浴衣は着せなかっただろうし、アジア人は選ばないと思う。カウボーイにするかな」とのことでした。その答えに対し、Hegwigさんが「それじゃあ、映画『ブロークバック・マウンテン』そのものじゃない!」と言うものですから私たちは大笑いしてしまいました。


トリとなる奈加あきらさんのショーは、光とスモークによる鬼のこさんのサイバーロープやMidoriさんの斬新なショーとは対照的に、淡白な美がゆっくりと醸し出されるオープニングでした。そしてモデルをじりじりと吊りあげていくあきらさんの縄は複雑精緻なものであることがすぐに分かりました。「あきらさんは縛りの原点に回帰しようとしているのかもしれない」と言う人がいましたが、確かに比較的最近の小道具であるカラビナを使わず、昔ながらの結びを縄で作ったものを天井につけていました。ショーも終わりになる頃には自分がまるで小妻容子さんの作品を実写で見ているように感じました。

2日間でこれほど濃密かつ秀逸な内容のイベントを見たのは初めてです。あの場に参加することができて本当に良かったです。Esinemさんが「体にかける縄が何のエモーションも起こさないのであればその縄は無駄だ」と言っていましたが、観客に何の変化を与えられないショーは無駄なのだと自覚するようになりました。私自身の中でも何かが変化しましたた多くのことを体験することができたこの2日間、今後の自分に対してさらなる向上を心に誓いました。